InDesignには慣れているのに、文字組みがよくわからない
先日は、フリーランスのデザイナーとして活動されているSさんのスポット・レッスンを行いました。
普段は雑誌の編集室に勤務され、デザイン・レイアウトに従事されているというSさん。制作スケジュールの関係上、デザインはすべて「先割り進行」で行われており、日常的にInDesignを使って作業をしているものの、日本語組版の詳しいルールについては、よくわからないままお仕事をされている状況だということでした。
そこで、今後の新たな案件のことも見据え、文字組について学んでおきたいということで、職場がお休みとなる週末にレッスンを受けておこうとアーストを訪れました。
「先割り進行」とは、写真などのビジュアル要素と、タイトル・リード・見出し・本文テキストなど、誌面を構成する要素を、あらかじめ編集者のほうで決めておき、デザイナー側にはデザイン・レイアウト作業を、ライターには文字数を指定したうえで執筆作業を依頼し、双方が同時に進めていくスタイルのこと。週刊誌や月刊誌など、限られたスケジュールの中で効率よく制作をすすめていくために、よく用いられている進行方法です。
つまり、Sさんがデザイン作業をする段階では、通常テキストに関してはダミーの状態で作業することになります。仕上がったデザインデータは、印刷所や他の制作会社のDTPオペレーターに渡り、その段階で、本番のテキスト原稿に差し替えられ、完成に至るのです。
そのようなわけで、「InDesignには慣れているけれど、文字組みについて今ひとつ自信がない」というSさんのさまざまな疑問に、逐一お答えしていくという方法で、今回のレッスンは進んでいきました。
禁則処理の基本や行末/行頭の約物の扱いについて、文字スタイルと段落スタイルの使い分け、日本語組版に用意されているプリセットのそれぞれの違い、文字組アキ設定とはどういうものか……などなど、2時間半のレッスンの間、かなりマニアックな……というか、初心者には聞き慣れない用語が飛び交う内容となりました。
アメリカ発のデザインソフトであるInDesignですが、ローカライズにあたっては日本語特有の組版ルールもきちんと考慮されており、必要な機能は備わっておりますから、詳細な組版ルールを知らなくても、デフォルト設定のままで十分に雑誌や書籍等の制作はおこなえます。
しかし、出版社あるいは編集部では禁則処理や約物の扱いについて、それぞれ特有のルールを定めているところも多く、そうした場合にはInDesign側の設定も随時変更して対応していかなければなりません。
今回のレッスンでは、具体的なルールがまだわからない段階だったため、おおまかに設定の仕方や変更の方法などを解説するのにとどめ、今後、実際の作業において疑問が生じた際には、あらためて実践的にレクチャーすることをお約束いたしました。
デザイナーとして忙しく働きながらも、休日を利用してレッスンをお受けになったSさんは、
「長いことInDesignを使っているのに、いくつも誤解をしていたということに、気がつけてよかった」
とのこと。
今後も、あたらしくお仕事の幅を広げられ、ますますご活躍されることと思います。